スプーン一匙の物語

ツイッター(@maru_ayase)で書いた短い短い小説の保管庫です。

ふたつめ

冬になると、好きな人が手を繋いでくれる。「さむー」「おはよ」「おはよ。ね、ポケットに手ぇ入れさせて」「やだ。アンタ手ぇ冷たいもん」「いいじゃん!ああさむい」コートのポケットに氷のような手を押し込まれ、私は大げさに身震いした。てのひらの窪みに溜まった熱を、冷たい指がすくっていく。