スプーン一匙の物語

ツイッター(@maru_ayase)で書いた短い短い小説の保管庫です。

さんじゅさん

春は美味しい。芽吹いたばかりの若い芽を摘み取って湯がき、味噌を添える。春は恐ろしい。しばしば桜の下で子供が消える。冬眠明けの鬼がさらっていくのだ。わずかに蕾をほころばせたふきのとうを口へ運ぶ。ほろ苦く甘い背徳の味。みずみずしい赤子を噛み潰す鬼も、きっもこんな心地でいるのだろう。