スプーン一匙の物語

ツイッター(@maru_ayase)で書いた短い短い小説の保管庫です。

さんじゅしー

夏の手紙は全然だめだ。行間に潜む細かな虫がもぞもぞと這い出して言葉をかじり、文面を湿っぽく変えてしまう。夜中でも思いつきで自転車にまたがり、会いに行けてしまう気温が悪いのだ。冬の手紙は潔い。虫も私も自転車も、雪に籠められ動けない。届くのは手紙だけだから、揺れない言葉をただ刻む。