スプーン一匙の物語

ツイッター(@maru_ayase)で書いた短い短い小説の保管庫です。

やっつめ

初めて鹿が出たのは十二歳の時だった。鹿は大きくて獣臭く、澄んだ目がとても美しかった。中学に入ると次第に小さくなり、ねじれた角を伸ばし始めた。生きるのが辛かった高二の冬、乾ききった角がぼたりと落ちた。みずぼらしく縮んだ鹿を抱きしめる。二筋の赤い血が流れ、代わりに私の涙が止まった。