スプーン一匙の物語

ツイッター(@maru_ayase)で書いた短い短い小説の保管庫です。

2016-03-10から1日間の記事一覧

ここのつ

美しくて新しくて、売れる商品が必要だ。花、菓子、洋服。考えながら退社し、考えながら子供を迎えに行く。牡丹、ボタン、インコ。深夜に夫が帰ってくる。今週はああで来週もこうでえー大変じゃん。鳥、南国、女の子。なんで一緒にお風呂に入ってるんだっけ…

やっつめ

初めて鹿が出たのは十二歳の時だった。鹿は大きくて獣臭く、澄んだ目がとても美しかった。中学に入ると次第に小さくなり、ねじれた角を伸ばし始めた。生きるのが辛かった高二の冬、乾ききった角がぼたりと落ちた。みずぼらしく縮んだ鹿を抱きしめる。二筋の…