スプーン一匙の物語

ツイッター(@maru_ayase)で書いた短い短い小説の保管庫です。

にじゅうし

ほどけるのが得意な人だ。狭い通路も、爪先からするすると輪郭を崩し、一本の糸になって通り抜けてしまう。ある日、私で服を作って、と言った。人としてではなく、物としてあなたに愛されたい。浮気の後ろめたさから僕はかぎ針を持った。夕焼け色のワンピースになった彼女は幸せそうだ。僕を忘れて。