スプーン一匙の物語

ツイッター(@maru_ayase)で書いた短い短い小説の保管庫です。

じゅうろく

家に沈丁花の匂いが漂っている。妹が発情期に入って、体のどこかに咲いたのだ。飲み屋の女にクローバーをうつされた父親の首筋に生えた芽を、母親が苛立ちながら抜いている。昨日初めて触れた彼女の下腹には、紫色の桜草がみっしりと咲いていた。種が紛れ込んだのだろう、俺の太ももにも一輪光る。